66人が本棚に入れています
本棚に追加
魔法によって管理された庭園には大陸全土の四季折々の花が咲き、ガーデンテーブルにはアシュリンの好きなお菓子が並べられていた。
仕事用のエプロンではなくドレスを身に纏い、元平民だとは思えないほど綺麗になったアシュリンの向かいに座るエメルは、チョコチップクッキーを一齧りしてニヤリと笑う。
「ね、幸運の御守りは効果があったでしょう? 処刑寸前だった異国の王子様を救った上に、寂しがり屋の王様となった彼の心を三年間も支えてあげて、アシュリンは王子様を救った聖女として、この国の王妃として迎えられた。そして私は、王立魔法研究所に就職が決まって研究三昧の日々!」
摘まんでいるクッキーを口の中へ放り込み、エメルは芝居がかった動きで両手を広げた。
「これってハッピーエンドってやつじゃない?」
ぱちぱち手を叩くエメルとは違い、アシュリンは眉間に皺を寄せて眉を吊り上げた。
「終わりじゃないでしょう。これから始まるのよ!」
攫われるように連れて来られた異国で、人々からは王様の命を救った聖女扱いをされて、いつの間にか進められていた結婚式準備。
少々強引で思い込みが激しいところが困りものだが、それを除けばアシュリンは夫となるルークのことを好ましく想っている。とはいえ、急展開についていけない時もあるのだ。
一週間後に控えている結婚式の後、待っているだろう王妃としての仕事を自分がやれるのか、考えるだけでアシュリンは泣きたくなるのだった。
***
ハッピーエンドはこれから……?
最初のコメントを投稿しよう!