弟の休日

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弟の休日

ある日曜日の朝、由香は2階から降りて来るとリビングを見渡すと 「あれ? 文は?」 由香が時計を見ると針は9:00を示していた。 「出掛けたわよ。なんか友達と遊びに行くって、朝早くから。あなたも、朝ごはん早く食べちゃって……」と玲子がベーコンと目玉焼きがのったお皿を友香手渡した。 「ふ~ん」と言うと由香はテーブルにお皿を置き、椅子に座るとグラスに注がれた牛乳を飲んだ。   都会の駅前広場に立つ文彌と仲間たち…… 「うゎ~。何かすごくね?やっぱ都会は  ちがうね~」と興奮する仲間たち 「うるさいよ……静かにしないと、  恥ずかしいじゃん」 「そんなこと言わないで!文彌くん   今日はありがとうね……まじ感謝」  仲間の一人が言った。 文彌が朝早からく出かけた理由…… 『イケメン男子高校生・ 発掘オーディション2次審査』  嫌がる文彌を説得し、仲間が冗談半分で応募したこのオーディション、 文彌はなんと1次審査の書類選考をパスしてしまっていたのだ。 今日は、その2次審査、仲間全員で『文彌の引率』の名目で都会に遊びに来たのだった。 「じゃあ、俺 会場こっちだから……」 「文彌!頑張れよ!俺たちみんな応援してるからな!じゃあ、またあとで!」 「わかったよ。取り合えず行ってくるから、終わったら連絡するよ」と言うと文彌はオーディション会場に向かって歩いて行った。 オーディション会場に向かう中、文彌は思う。 「父さん、母さんに内緒にして今日来ちゃったからな、 まあ、合格するわけないから、早く終わらせてあいつらに合流しよう」  文彌を待つ仲間たちは、若者が集まる『噂の街』で人気のスウィーツを食べていた。 「文彌大丈夫かな?」 「どうかな?都会はイケメンだらけだからね。 ほら!あそこにもイケメンがいるぞ あそこにもいる!」 「でもさ、文彌は意外とモテるんじゃね?結構女子にも人気あるしさ。この前なんか、2年生の女子から連絡先聞かれてたぞ。本人には自覚はねーみたいだけど、あいついい男だと思うんだけどな」 「あっ!そのこと、知ってる 知ってる でも、 あいつ女子に興味ねーのかな?」   「まぁ、文彌の女子の基準というか近くにいるのが『あのねぇーちゃんと母ちゃんだろ?』それじゃあ、その辺の女子は基準以下になるんじゃね?」 「う~ん。そうだよね。確かに文彌のねぇちゃん、可愛いよな……それに母ちゃんも綺麗だし」 とその時スマホの着信が鳴る。 「あっ!文彌からだ。 もしもし、うん?終わった? 会場? えっ? 合格? はっ?最終審査?うそ~ん、文彌2次審査合格したって」 「うえ~い!」文彌の仲間全員歓喜の雄叫びを あげる。 街の真ん中で叫ぶ男子高校生の集団は通行人たちの目を引いていた。 時間は、3時間前に遡る……。 「結構人いるな……うわあ~イケメンだらけだ。あの人、足長っ! 」と文彌はオーディション会場の控室のドアから中の様子を伺っていた。後ろから声がして振り向くと一人の男性が文彌に声をかける。 「入らないのですか?もうすぐ始まりますよ。」 「あっ、すみません」 「君は確か……まあいい   審査頑張ってください 」 「あっ、ありがとうございます」と言うと文彌は控室に入って行った。 「片桐さん、そろそろですよ」スタッフが男性を呼びに来た。  「わかった すぐ行く」と言うと男性は、文彌の 前から歩き去った。  2次審査終了後、会場を後にした文彌は仲間たちと合流する。冷静な文彌とは正反対に仲間たちは文彌の2次審査通過に興奮する。    「ね、ね、何人くらいいたの?」  「さあ、20人くらいかな」  「え~!そこから何人になったの?」  「8人」  「え~!凄いじゃん、文彌凄いじゃん。」  「お前らいちいちうるせ~よ。」  「で、最終審査はいつあんの?」  「2週間後に00ホールで一般客の会場審査とメディア関係者の合同審査内容は、ウォーキングとドラマ仕立ての簡単なお芝居と歌」  「00ホールってコンサートなんかやるあの大きな会場だよな? 文彌~なんかもう、芸能人じゃね?ってかさ、文彌このこと両親には言ってるの?」 「い、いや 言ってない まさかここまで残るって思ってなかったから  いささか、もう言わないとまずいかなって  思ってる」 「だな。言わないとまずいよな……俺たちが勝手に応募したこと説明しようか?」 「いや、大丈夫 自分で言うから 」  と文彌は言った。    その頃、家では帰りが遅い文彌を由香は心配していた。 「文、遅いね~どこ行ってんだろね?」と友香が時計を見ながら玲子に話す。 「そのうち帰ってくるわよ」   玄関を開ける音がしたのを聞いた友香はリビングから玄関に向かい、靴を脱ぎかけていた文彌に聞いた。 「遅かったね~、文彌君どこに行ってたのかしら?」 「遊びに行ってたんだよ。はい、これお土産」と言うと小さなお菓子が入った箱を由香に渡した。 「えっ!ありがとう。わあ~これって今都会で流行りのお店のお菓子じゃん」 箱のラベルは人気の街の 人気スウィーツ店のロゴ。 「ありがとう 文」と由香が笑顔で言うと 「どういたしまして!」と文彌は優しく微笑んだ。
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