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ある朝の出来事
「由香、文彌を起こしてきて来てちょうだい」
と朝食の準備をしながら玲子が言った。
「は~い」珍しく早く起きた由香は、軽やかに階段を上ると2階の文彌の部屋のドアを開ける。
『ベッドの端っこ』に毛布に
くるまって寝ている
文彌が見えると由香がゆっくり文彌に
近づき覗き込む。
「文、起きて、朝だよ」
とさらに文彌の顔を覗き込む。
寝ているはずの文彌の瞼がゆっくりと開き寝ぼけ眼で由香を見ると、ゆっくり自分の手を前方へ伸ばしベッド脇に立つ由香の手を掴むと
『ぐいっ!』と自分の胸元に引き寄せた。由香はそのまま文彌の胸元に倒れ込む。数秒の間、室内が静まりかえる。
文彌も無言のまま 文彌に胸元で『ハグ』をされたままの状態の由香、目を『パチクリ』とさせる。
「文?」
「……」
「ちょっと文、何してんのよ!あんた誰と間違ってるの?」と言いうと『パチパチ』と文彌を軽く叩き、文彌の胸元から離れ自分の体を起こした。
「痛ってえな~ 何すんだよ」
と言いながら文彌も起き上がる。
由香は、部屋の窓を全開にした。窓からは勢いよく朝の冷たい風が入り込む。
「寒い!開けんなよ~」
「早く起きないからよ!あんたね~『イケメン高校生』とか言われて、可愛いモデルさんや年上の綺麗なお姉さんにいつも囲まれてるのはわかるけど。
こういうのはよくないよ。
もう! いつの間にか色気づいちゃってさ
おねえちゃんは悲しいよ。
昔の可愛い文彌はもういないのね」
と言うと、脱ぎ捨てられたトレーナーを
文彌に投げつけた。
「ちげーよ、寝ぼけただけだろ?
んな……おおーげさな」
と言いながら投げられたトレーナーを着る文彌。
「はい、はい わかりました!
早く起きて早く下に降りてきてよ」と言う
と由香は部屋を出て行った。
「だから!寒いから閉めろよ窓~」と口を尖らせ、ベッドから立ちがり文彌は窓側に歩いて行き、窓を閉め振り返ると「はぁ~」と溜息をついた。
そして由香が降りていく階段の方向を見つめるのだった。
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