僕たちの家

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僕たちの家

春の暖かい日差しが庭一面に広がる 晴れた日の朝、 玄関から聞こえてくる男の子の声。 「行ってきます」 「はい、いってらっしゃい」 母親の玲子は玄関で長男文彌を見送る。 遅れて後ろから、姉の由香が慌てて文彌を 追いかける。 「ちょっと、待ってよ、文(ふみ)  あっ! お母さん行ってきます~」 黒いローファーを履きながら玄関を出て行く 由香に、 「忘れ物ない? 気をつけて行くのよ」 と玲子が声をかけるのはいつもの朝の光景だ。 母親に見送られ、勢いよく木々が茂る小道を 走って下り車道に飛び出す文彌。 追って姉の友香が追いつくと、 「間に合った~?」 息を切らしながら文彌に声をかけた。 「うん、何とかねえちゃんがもう少し早く 起きてくれたら毎日、毎日こんな感じに ならなくてすむのに」 息を切らした文彌も友香に言った。 「仕方ないじゃん、昨日ツバサの  生配信見てたらさ、  寝るの遅くなったんだもん」  ふたりが話をしていると、 定刻通りに前方より バスがバス停に停車し、二人はいつもの ように乗り込んだ。 立花由香、18歳は高校3年生。  ショートカットが似合う女の子。 弟の立花文彌は2つ下の16歳、 高校1年生、サラサラ髪とスラリとした 容姿の男の子。 二人は、近所でも評判の『仲良し姉弟』。 個人で貿易関係の仕事をする父、立花純平と、 いつも優しい専業主婦の母、玲子の4人家族。 友香と文彌と両親は毎日平穏に明るく楽しく 暮らす。   友香と文彌が住む家は、都会から1時間くらい離れた小さな港町、車道から脇道に入り、木々が茂る小道を登ると小高い場所にポツンと建っており北欧系の一見ペンションのようにも見える。 家の周りには緑の木々が茂り、緑色に包まれたこの家は、開けた庭と2階からは青く輝く海と夜には満点の星が見えるという最高のロケーションを有していた。
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