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小説10
アパートの玄関で、見かけた缶ビールが落ちていた。私の買った銘柄と同じである。見ると、開封されていない。私はその様な物をヒラって飲む様な、さもしい人間では無い。蹴っ飛ばして道の隅に追いやった。しかし、
もしかすると、私が買った缶ビールであそこに落としたのかも知れない、と
思い直し、缶ビールをヒラって会社に向かった。
会社に向かう途中、出会う人から、怪訝な表情をむけられた。
一体どうしたことか?と思いつつも、会社に入り、
部署に着いた。 その時である、ある女性の悲鳴が後から聞こえた。
なんだ! この悲鳴は?
恐る恐る、振り向くと女性の引き攣った顔があった。
「どうしたのですか」と聞く僕の言葉がかすれていた。
女性は「憑いている」とおののき、目を逸らしたのだ。
「何が付いているのですか」と聞く私の言葉を遮るかのように、
逃げて行ったのだ。そういえば、その女性は以前から霊感が強いとある人から聞いた事がある。
すると、後から、物凄い力で剥ぎ取られる感じがした。
男から引っ張られられたのだ。
「おまえなーー、なんでこんな物付けてきたんだ」と
見ると、ゴキブリがベッチャリと私のスーツの後ろにくっついていたのだった。
私は思った。このゴキブリ、ゴキブリホイホイの中から脱出し私の背中にくっつたのだなと。何て、根性のあるゴキブリか。私は尊敬の念を持ってゴキブリを見つめていた。それと、素手でゴキブリを剥がしてくれた先輩にも感謝である。
続く。
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