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第一章
「今、僕の目の前にはとても美味しそうなミルクティーがある、とする」
教室の隅の席で俺は淡々と語る。
「君は一体どんな空想の少女と話しているんだい」
呆れたように近づいてきたのは中学からの友達の前川蒼汰だった。
「俺の理想世界に入ってくるな。あと勝手に少女だと決めつけるのはやめろ」
「あれ?少女じゃなかったかな」
蒼汰は全てお見通しだと言うような表情をして見せた。
「当たり前だ。今のは俺の理想世界内でのナレーションだ」
「まあ、なんでもいいけどさ、裕哉は数Bの課題やったの」
何でもよいという言葉に引っかかったが、あえてスルーし、話を進めた。
「やってないな。存在自体を忘れていた」
「やっぱりね。僕もまだだから一緒にやろうと思ってたんだけど……」
蒼汰が鞄から数学の問題集とノートを取り出して机の上に広げようとしたその時、ガラガラという音と共に担任の古坂が教室に入ってきた。
かと思うと、古坂の後ろに続いて一人の女子がやって来た。
「おい、あれ」
教室内が騒めきだす。
「おい見ろよ裕哉。……裕哉?」
バタンーー
「裕哉!!」
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