おにによこみちなきものを

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 まぁ、ね。たしかによくなかった。シュタインドッヂよくなかった。よくなかったかもしれないけど、仕方なくない?  大波で船やられて、樽にしがみついて流されてさ。目を覚ましたら漁村。宋かどっかに流れ着いたのかなって、交易船に潜り込めれば何とか帰れるかなって期待してたら言葉通じない。 ああもーだめだ奴隷だって絶望してたらマイラオウサなんて変な名前のジーさんに案内されてさ。なんかいい感じの家に通されたと思ったらチェナゴンとかいうおじさん出てきて。  とりあえず持ってるの樽しかないし、何とかこれで交渉できないかなぁなんて差し出しても何かびびってるし。  赤ワインだよ?美味しいよって目の前で飲んでみせたらドン引き。なんなの?  分かんない分かんないって首振ってたら、なんかチェナゴンの娘さんが出て来て、どっか行くっていうのよ。客間かな?幽閉かな?なんてドキドキしてたら外に連れ出されて歩く歩く。  村からどんどん離れてくの。  意味分かんなくない?意味分かんなくない?  何で娘さん一人なのぉって思うじゃん?危ないじゃん。男子ぞ?ドッヂ男子ぞ?  そのまま樽抱えてスゲェ歩いてさ、なんか辺鄙な村に着いていよいよ手錠かな?なんて。でもその時点で薄々ドッヂ気付いてた。ドッジ賢いから、おばぁちゃんにいつも褒められてたし。  投獄とか奴隷なら娘さん一人とかあり得ないもんね。娘さんは多分ドッヂへの生け贄。言葉分かんねーって首振ってるうちになんか話がめっちゃデカくなってる。  でも、コレある意味チャンスじゃね?って思う訳さ。だって娘さん村で何か色々指示してさ。荷車が用意されて、あっという間に食料、酒、服、武器。ポンポン積まれていくのよ。  ホント、あと船と地図だけ。それだけ用意出来れば祖国に帰れるって思ったよ。  おばぁちゃんにきっとまた会えるって。  そう思ってた時期がドッヂにもありましたぁ。  多分召使い的なものとしてついて来たのは全員女の子。向かった先は山奥さ。運べないじゃん、船運べないじゃん。どーすんの?  女の子達も何か皆シクシクしながら荷車牽いちゃってさ。もう可哀想でみてらんない。  手伝うよーってやるとさ、とんでもないとんでもないって、言葉なんて通じなくても分かるよ。多分ドッヂってば2m級巨人的なものとして扱われてる。ここの人みんなめっちゃ小さいし。山道なんて荷車入れられないじゃん?小さい身体に荷物いっぱい抱えてさ。ドッヂ泣いちゃったよ。ごめんねーって、何度も頭下げた。まるで謝罪ンドッヂさ。でも通じない。
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