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 携帯の振動がベッド横の木製のナイトテーブルを叩き、鈍い音を立てる。私は、布団の中から右手で自分の頭の左で鳴っているうるさいヤツを手に取った。目をこすりながら携帯の目覚ましを止め、5:30の文字を確認する。ゆっくりと上体を起こして、両腕を上に延ばしてストレッチする。そして隣を見て、微笑んだ。そこには、間抜けな顔で寝ている私の彼氏がいた。  そうだ、今日はなんだ。  少しいたずらをしてみたくなって、彼の髪に優しく触れると、彼は少し唸った。もう一度夢の世界に飛び込みたいところだが、あいにく私も彼氏も仕事がある。彼はもう少し寝かせてあげようか。暗がりの中、私はそろりとベッドから抜け出して、朝の支度に向かった。  お気に入りの可愛いピンクのパジャマを着替え、朝食を作り終え、そろそろ彼を起こそうかと思ったとき、彼が起きてきた。 「おはよう。ちょうど朝ご飯できたところだよ」 「ああ、おはよう。ありがとな。早くに起きて、朝食つくってくれて」 「気にしないで。それに本当に簡単なものしか作ってないから」 「そうだとしてもありがとう。明日は俺がつくるよ」 「本当に?今後も私が作る気満々だったけど」 「まあ、そのあたりの役割分担とかも今後話し合っていこう。とりあえずサッと顔洗ってくるわ」  そうして、できた朝食を食卓に運んで、向かい合った席に座り一緒に食べ始める。初めて彼に食べさせる料理なのだからと、少し見栄を張って作ったエッグベネディクト。テレビもつけない、小鳥のさえずりも聞こえない静寂の中で、私は彼の感想を待った。 「おいしいな」 「本当に!?」 「うん、すごくおいしいよ」  そしてまた、沈黙が訪れる。その後の会話が続かずに、黙々とフォークとナイフ、スプーンを動かす。そんな中で、スプーンを口元に移動させ、大口を開ける彼と目が合った。  この無言の静けさと意味の分からないぎこちなさがなんだかおかしくなってきて、どちらともなく笑った。 「なんか、気恥ずかしいね」 「まあ、そりゃ、な」 「これからゆっくり慣れてこうよ。先は長いんだからさ」  そういって私は、彼に微笑みかけるのだった。 「忘れ物はない?」 「ああ、たぶん」  彼が仕事のために家を出る時間は私より早い。だから、私がお見送りをすることになる。  私は、玄関から出て行こうとしている彼に声をかけ、両手を大きく広げた。彼は少し口角を緩めて笑う。私はこの少し困ったような笑顔が大好きだ。  そして、玄関で彼と抱き合いながら、キスを交わす。彼の胸板はがっちりとしていて、抱きしめられると少しの苦しさと大きな心地よさを感じる。  にやけてしまう。まだ彼と結婚している訳ではないけれど、夫婦のやりとりみたいだった。今も幸せなのに、結婚したらどれだけ幸せになるのだろうか。早く彼と結婚したい。 「それじゃあ、いってくるよ」 「うん、気をつけてね。いってらっしゃい」
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