25時のシンデレラ

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 番組が放映されると「神回」と呼ばれ話題となった。  真琴はまだ現実に戻れず呆けていた。仕事でミスを繰り返し、今日も上司に怒鳴られた。覚束ない足取りで駅までの道のりを歩いていた。そんな時だった。 「真人間!」  聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには誠がいた。 「え、え!?」 「お茶でも飲まない?」  誘われるまま真琴は誠の後をついて駅前の喫茶店に入った。 「先日はお疲れ様でした……いえ、結婚を控えた人が女性と喫茶店なんていいんですか?」  紀香の顔が浮かんだ。 「いいんだ。ヤラセだから」 「…………え!?」  誠は売れない役者だった。今回は主役としてテレビに出られると言われ出演したそうだ。 「他の出演者は?」 「ノリも役者だ」 「ノリちゃんも……」  ショックだった。全て仕組まれていたとは。 「他の参加者は一般人だ。その方がリアルで面白いだろうからって」  筋書きがあるとも知らず競わされていたとは。 「酷い。みんなが可哀想」 「悪いと思ってる。でもヤラセだってバラすわけにもいかないから謝りにも行けない」 「じゃあ何で私には話したの?」  誠は大きな体を小さくした。 「君に勇気を貰ったから、僕が諦めない人だって言ってくれたから。もう役者は諦めようと思っていたんだ。でも君の言葉で、もう一度頑張ろうと思ったんだ」  誠はまっすぐに真琴を見つめた。 「僕も真人間になる。ちゃんとした役者になるように頑張る。だから、これからの僕を見てて欲しいんだ。真琴に……」  誠はガラスの靴を真琴に捧げた。 〈終〉
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