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ディナーの後、真琴と紀香が部屋に向かって歩いていると廊下に女性達が立っていた。
「何であんな子が参加者なわけ?」
「ほ〜んと。普通の何処にでもいる子なのにね」
「もう1人は小学生」
みんなクスクス笑った。
感じは悪いが本当の事だ。真琴は黙って通り過ぎようとした。
「私小学生じゃないもん!」
紀香が反論した。
「子供は帰って宿題したら?」
恵梨香がせせら笑いしながら紀香に言った。
「どうせアンタなんか選ばれないんだから」
「そんな事言うアンタこそ選ばれっこないわ」
「ちょ、ちょっと……ケンカはやめましょうよ」
真琴が間に入った。すると恵梨香はギロリと真琴を睨んだ。
「アンタが一番邪魔なのよ。テレビに出られる顔? みっともないから消えてよ」
とても幼稚園の先生とは思えない、どちらかというと難癖をつけるモンスターペアレントの顔だった。
「誠さんだって私達には話し掛けづらいのよ。だからどうでもいいアンタと話をしてるだけなの。そこんところ勘違いしないでよね」
真琴はその通りだと思った。自分や紀香は番組の中ではピエロ的役割なのだ。どうせ選ばれるのは他の8人の中の誰かだ。
今日は楽しかった。あんな素敵な人と食事が出来た。それだけでもラッキーだ。そう思えば恵梨香の機関銃のような罵声も我慢できた。
その時、「クスッ」と声がした。声の方を見るとカメラさんが撮影していた。後ろで紀香が満足そうに腕を組み微笑んでいた。まるで映画監督のように。
「ヤダ、違うんです! これは違うんです!」
慌てて取り繕う恵梨香。
「お願いします。撮影した映像は消してください」
「いやあ、面白かったんで放送に使わせてもらいます」
「そんなの困ります!」
「本当の姿を知らないと王子様もパートナーを選べないでしょう」
「本当のって……私は本当は優しくて子供好きで……」
「はいはい。それから?」
「……」
恵梨香は自分の部屋へ飛び込んだ。そしてそれ切り姿を現さなかった。
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