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境界線上の人形達
人は無価値な存在だ。だが、人は人に価値を見出す。そして、その価値を脅かされる事を最も恐れるのだ。
1
魔法王国ミュスティカは陸の孤島である。
魔法の力を独占していた。魔法の力を持って小さな領土内だけで発展していたのだ。先王の死とオークが侵攻してくるまでは。
薄曇りの下、白い石畳が隙間無く敷き詰められた城下町の広場。中央の花壇と噴水は手入れがされなくなって久しい。
私は広場の隅で子供達に人形劇を披露していた。木材屋の廃棄予定だった端切れを寄せ集めた小さな舞台の上で魔導人形を動かし、台本通り喋らせ、私が語り部を務める。
「今日もありがとうベルマン! 楽しかった!」
いつも劇が終わると残ってお礼を言ってくれる少女に笑顔で応える。
「やあクリス。いつも楽しんでくれてありがとう! 今日はアレックスと一緒じゃないのかい?」
その時少女の瞳が僅かに揺れた。
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