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段ボール箱の外では、いつのまにか雨が降り出していました。
まるで絹糸のような細い雨粒に、外の世界は白く煙っています。
「何も見えないね」
「本当に、外の世界が何もないみたいだ」
「この家、いつまでもつかな」
「雨漏りがしたら、僕があなたを守りますよ。僕の体は木でできているから、ちょっとの水ぐらいへっちゃらだ」
「ふふ」
女の子はまた笑います。嬉しそうで、でも少し寂しそうな声で。
「でもね、ゴミ収集車が来たら……。あのね」
女の子は、少し黙ります。
「私もう、生まれてから二十年になるの。ぬいぐるみとしては、もうおばあちゃん。だからもう、私はいいの。だけど、あなたは?」
「僕は、八年です。きっとそうだ」
「え、何が?」
「持ち主から愛されて時間を過ごすと、おもちゃの心は美しくなるらしいですから。だから、あなたの心も美しい。そうでしょう」
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