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『成績は申し分ないが、競争心が無いところがお前の長所で短所だな』
クラスの担任にそう言われたのをふと思い出す。
その日の帰り、炭澤に会ったのも。
『能ある鷹は爪を隠すって言うし』
コンビニで買ったアイスバーを齧りながら笑った顔。
『大事なときにその研いだ爪、見せれば良いんじゃない?』
同窓会がお開きになり、二次会に行く人間たちと別れて散り散りになる。
一人で駅の方へ向かう。同じように居酒屋から出てきたサラリーマンたちとすれ違う。なんとなくスマホを出すと、今日の同窓会の写真が何件もアップされていて通知が来ている。鳴り止まないそれを横目に、連絡帳を開いた。今じゃもう電話番号を交換することも少ない。でも、何かの拍子に炭澤と交換したのが残っていた。
流石にもう変わってるだろう。そう考えながら、軽い気持ちでタップした。酒が入っていたから、という理由を後付けて。
『もしもし』
でた。
一気に背中に汗をかく。酒が身体から抜けていくのを感じた。
『もしもーし、いたずら?』
「じゃない、久しぶり」
『たしかに、久しぶり』
その変わらぬ声を聞きながら、漸く現実に戻ってこられた。
『なんかあったの?』
なんかあったから電話するという距離感でも無いのに、炭澤は尋ねてくる。でも何も変わっていない。
「高校の同窓会あったけど、炭澤来てないのかと思って」
『え! 声かかってないんだけど、ハブじゃん』
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