PM 9:30

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『成績は申し分ないが、競争心が無いところがお前の長所で短所だな』  クラスの担任にそう言われたのをふと思い出す。  その日の帰り、炭澤に会ったのも。 『能ある鷹は爪を隠すって言うし』  コンビニで買ったアイスバーを齧りながら笑った顔。 『大事なときにその研いだ爪、見せれば良いんじゃない?』  同窓会がお開きになり、二次会に行く人間たちと別れて散り散りになる。  一人で駅の方へ向かう。同じように居酒屋から出てきたサラリーマンたちとすれ違う。なんとなくスマホを出すと、今日の同窓会の写真が何件もアップされていて通知が来ている。鳴り止まないそれを横目に、連絡帳を開いた。今じゃもう電話番号を交換することも少ない。でも、何かの拍子に炭澤と交換したのが残っていた。  流石にもう変わってるだろう。そう考えながら、軽い気持ちでタップした。酒が入っていたから、という理由を後付けて。 『もしもし』  でた。  一気に背中に汗をかく。酒が身体から抜けていくのを感じた。 『もしもーし、いたずら?』 「じゃない、久しぶり」 『たしかに、久しぶり』  その変わらぬ声を聞きながら、漸く現実に戻ってこられた。 『なんかあったの?』  なんかあったから電話するという距離感でも無いのに、炭澤は尋ねてくる。でも何も変わっていない。 「高校の同窓会あったけど、炭澤来てないのかと思って」 『え! 声かかってないんだけど、ハブじゃん』
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