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AM 0:30
本当のことなんて、何もなかった。
腕枕というものを人生で初めてしてもらった。
痛いのでは、とごそごそと寝る場所を迷っていると背中を抱きこまれ、額に鎖骨が当たる程にくっつく。その背中に回したかった手を抑えて、氷高の胸の前のTシャツを掴んだ。
体温の高さにうとうとする。
仕事帰り、久しぶりに氷高に会って、そのまま飲みに行って、流れでベッドに。氷高の家は私の家より綺麗で、想像を裏切らなかった。彼女、いそう。
そういう話、少しもしなかった。ただ高校の頃の話で盛り上がって、今の職場の話を少しして。
翌朝、服を着て立ち上がろうとすると裾を引っ張られて後ろへ転がった。寝ていた氷高に後頭部から突っ込んで驚く。
「どこ行くん、ですか」
「え、かえり、ます」
何故か驚いた顔と声に、こちらも同じような声で返してしまう。
「今日、仕事?」
「え、ううん、やすみ」
「じゃあまだ居れば?」
「でも、洗濯物干しっぱなし、だし」
外に干されたタオルたちが今頃カラカラになって私を待っているはず。
「洗濯物に負けた……」
「ん? なんて?」
「わかった、送ってく」
「いいよ、一人で帰れるし」
「送る」
気怠そうに身体を起こして、氷高は駅まで一緒に来てくれた。途中、コンビニに寄って朝ごはんのパンとコーヒーも買ってくれた。今日のお代ってとこなのかもしれない。
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