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 駅で別れたらもう会わないだろうと思っていたけれど、翌週の休日にまた会って、飲んで、寝て。  ずるずるとそんな関係が続いた。  身体の相性は良い方だと思う。でも別に氷高は付き合おうとも言ってこないし、私もそういうことを言って嫌そうな顔をされたり、会って話すのが無くなるのかもと考えたら、このままで良いと思う。  氷高がどう思ってるのかは分からないけど、私は一緒にいるのが楽しかった。  でもちゃんと、次の朝には帰った。律儀に氷高は毎回送ってくれて、パンとコーヒーを買ってくれる。  それに安堵してた。 「氷高って銀行員なんだよね」 「普通に会社員だけど」 「上司からお見合いとか奨められないの?」  コンビニで目についたゼクシィから、それをふと口にする。ぽかんと口を開けた氷高がこちらを見ている。 「今どき見合いとか」 「上司の娘さん、とか」 「しねえよ、末恐ろしいことを」  心底嫌そうな顔で離れていく。遠回しに結婚の話を出したからか。気をつけよう、と心に決める。  でも、氷高に彼女が出来たら、会うのもやめないと。 「彼女できたらちゃんと言ってよ」  その背中に言うと、無視された。反抗期の息子みたいだ。  氷高が結婚適齢期ならば私だって同じだ。  会社の飲み会で後輩の女子に奨められ、スマホを取られてマッチングアプリを入れられた。酔っ払ってるから許したけど、素面でやってたら笑って怒っていた。私は結構、気が短い。
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