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やり方はよく分からず、いいね! をくれた相手の写真をスワイプしていく。決め顔から自撮りっぽいものまでいろいろ。
暫くやっていると全て同じように見えてきて、飽きた。スマホを掴んだまま腕をソファーに投げ出す。シャワーを浴びた氷高がにゅっと現れ、私のスマホを見下げた。
それをスッと取られ、スマホを操作する。
「良い人いた?」
尋ねてみる。氷高に人の善し悪しが分かるのかどうかは知らない。いや、私と一緒にいる時点で人を見る目は無いのかも。
んー、と言いながら、最終的にぽいっとソファーにスマホが放られた。
「居なかった」
それだけ言って、キスをされた。
スマホからアプリは消去されていた。
誰のって何。
ムカついて悲しくてやはりムカついて、でもどこか諦めて、呆れて、悲しくて。
目についた牛丼屋へ入った。
大盛りつゆだくを頼む。涙を湛えた目の縁が決壊して、ぼろぼろとトレーに落ちた。
いっぱい食べよう。自分の為というより、この子の為に。
泣きながら牛丼を食べ終えて、店を出る。
足は自然と駅の方へ向かう。帰ってもこの気持ちは治まらないのは分かっているけれど、ここに居ても何も変わらない。
いや、変わった。私は自分の手で、変えた。ちゃんと終わらせた。
ふとあの夜を思い出す。同窓会があったという夜、氷高は電話をかけてきた。
全部、あそこから始まった。
じわりと涙がまた視界を滲ませ、私は歩き出す。この子と、生きていく。
そっと肩を掴まれて、振り向いた。
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