AM 9:30

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 炭澤はそれが気に入らなかったようで腕で払われた。 「いらない」 「炭澤」  目が合わない。顎を両手でつかんで持ち上げた。ぐっと上を向かされた炭澤は嫌そうな顔をする。 「じゃあ、相手紹介して」 「……するわけないでしょ」 「責任取れって俺が言う」 「氷高にそんな権利ない」  権利がない。耳が痛い、でも。 「なんでそんなに辛そうなんだよ」  苛つきが喉元までこみ上げる。炭澤が泣いているのが見えて、それは引っ込んだ。 「誰の子、なんて聞く氷高にそんなこと言われたくない」  どん、と肩を殴られた。なかなか痛い。 「ばか、ばか、ばーか!」  泣きながら悪態をつき、俺の肩を殴ってくる。やっと安堵できて、その背中を抱き込んだ。腕の中は炭澤は泣きながら、最後には背中に手を回してくれた。 「氷高の他に、好きな人なんていないもん」  ぐずぐずと泣きながら炭澤は可愛いことを言ってくる。 「……なんでそれを今朝言わねえんだよ……」 「誰の子か分かんないまま、一生苦しめば良いと思った」 「すげえ恨んでんじゃん」 「嘘だよ」  何が嘘だよ、と思いながらも俺も炭澤の肩口から顔を上げられないまま。  休日の昼前の駅の隅で、俺たちは何をしてんだろうと思いつつも。 「責任なんて、取らなくて良いよ」  墨澤の言葉にぐっと腕の力が強まる。
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