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3 戦い
実を言えば、感覚拡張/自動検知眼鏡をつけていても、実際の異星人を発見してすぐに、迷いなく撃てる自信はなかった。ましてや人間であれば、なおさらのことだ。私は、仮想現実内や模擬標的相手の即席訓練しか、受けていなかったのだ。
他の多くの村人にも、戦闘訓練の経験があるものは少なかったはずだ。村はそれまで、軍事活動はもちろん、派手な政治行動さえ行っていなかったからだ。私が見てきた村の生活は、団体の過激な主張とは裏腹に、一般社会と距離を置き、目立たず暮らすことのようだった。今回の作戦も異例なもので、村役場を通さず、団体本部が直接指揮をとっていた。だが肝心の人材が乏しかったので、私が兵士に選ばれた理由も、ただ若くて体力があったからとしか思えなかった。
そんなことを色々と悩んでいると、幸いにも一瞬で私の戦いは終わった。突然、電磁小銃の前半分が切れて落ちたかと思うと、背後からとんでもない力で抱きすくめられ、身動きができなくなった。綺麗な鈴虫の鳴き声のような音がすると、自動翻訳装置らしき可愛い女性の声が『私達を信じて、希望を持ち、抵抗はおやめください。自爆装置は無効化しました。身の安全は保障します』と続いた。どうやら敵は、私達よりも良い隠蔽技術を持っていたようだ。
普通だったら魅力的な状況だが、次に私の視界に入ったのは不可視化を解いた〝死神〟の長い首と、まさしく死神の大鎌みたいな戦闘肢だった。頭部に張り出した大きな複眼には、後ろを向かなくてもこちらが見えているようだ。私がおとなしく従った理由には、相手の温和な態度だけでなく、自爆装置という言葉に驚いたこともある。
そいつは戦闘肢で器用に私の防弾上衣の前部を切り取ると、把握肢を使って正面の河に向け、投げ捨てた。防弾上衣は沈んだ後に派手な爆音と水柱を上げ、私はさらに驚愕した。なんてことだ、本当に爆発しやがった! 眼鏡からの情報を受けて本部から送られた自爆信号を、連邦軍が一時的に妨害していたようだ。私は最初から、敵に襲われ、または投降した時点で、人間爆弾にされることになっていたのか?
木の下には〝死神〟と人間の混成部隊がいて、私は動揺したまま、彼等に村まで連れていかれた。すでに戦闘は終わっており、村の広場や上空には多くの小型垂直離着陸機が集まって、捕虜の輸送や警戒を行っていた。広場にはいくつか、牡牛座人のものと思われる装甲動力服も擱座していた。それらは一見無傷に見えたが、何やら多くのロボットや人々がとりついて、応急修理をしているようだった。
幸いなことに、村にも大きな被害はないようだった。しかし、私の上衣に隠されていた偽装爆弾のような、えげつない仕掛けが他にもあった可能性はある。もしもそうなら、村の人々が助かったのは、新帝国と連邦軍が遥かに高度な技術を持ち、それを人道的な政策に基づいて使ってくれたおかげか?とも思った。
一番大きな本部の建物から、何人かの異星人が連行されるところも見た。そいつらは二足歩行をしていたが、鮮やかな蛍光を放つ桃色の肌と4本の腕、4つの目を持っていた。私はそんな連中を見たことも聞いたこともなかったので、さらに不安が高まった。
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