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一行がまた玄関をくぐってゆく。とはいえ、それほど広くない生活道路にセダンが2台も路駐されると、ちょっとご近所さんに申し訳ない。多分、混乱しすぎて変なところが気になっているのだ。車の近くに残った運転手らしき男性に声をかける。
「あの」
「はい?」
「道が狭いので、車、動かしていただけませんか?」
「申し訳御座いません。ご迷惑は承知しておりますが、セキュリティーの観点から何卒ご理解いただけますと──」
彼がそう言い終わる前に、どこからか別の男がやってきた。紺色のスーツに身を包んだ男が運転手に何やら小声で伝えると、運転手の顔がハッとする。インカムで一言二言伝えると、
「すぐ動かしますので」
と小さく頭を下げ、車に飛び乗ると、どこかへ走り去っていった。紺色の男は既に走り去っていた。一体、誰なんだ? と疑問に思う間も無く、今度はアルファードとフーゴが停まった。
「誰、誰、誰?!」
三度目ともなればこの異様な状況にもいくらか慣れる。今度はどんな重役が来たのか。そう訝しんでいると、今度は見慣れた人が現れた。昨晩やってきた父の友人だ。
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