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◆真実への一歩 * 弥衣
なんなの、もう。
山のような服の他に、バックや靴、そしてアクセサリーまで。
買いっぷりも派手だったが、店側の扱いもすごかった。
時間もかかったからランチタイムになってしまい、中座しようとすると、食事まで出してくれた。
中世ヨーロッパ貴族の部屋のようなファビュラスなサロンに通されて、ささやかなお弁当と言うから軽食かと思いきや、届いたのは細く積み重ねられた重箱。
並べてみればアメイジング!
目にも鮮やかな懐石料理だった。
私がキャッキャと喜んでいると、尊さんは『家政婦、本当に雇わなくていいのか? 大変だろう?』と聞いてくる。
『大丈夫ですよ。あ、でも年末とか一年に一度くらいは専門家に頼んでほしいです。私の掃除じゃ行き届かないと思うから』
言ってから気づいた。
今はまだ春。年末はまだずっと先なのに、私は当然のように口にしている。
まるで本物の夫婦のように、尊さんも普通にうなずいて『わかった。必要な時はいつでも頼んでいいぞ』なんて言う。
担当者の女性が、お優しいご主人でうらやましいですと言っていたが、あの尊さんを前にしたらお世辞とは言い切れない。
人任せにせずにずっと付き添ってくれて、あれこれ意見を言いながら選んでくれた。
しまいには、額のキス――。
あれはもう反則だ。
自転車にぶつかりそうになって助けてくれたあたりから、なんだかちょっと距離が近かったし、なにかと私を気にかけてくれる。
百貨店を出てからもずっとそう。せっかくだからとカフェでお茶をして、帰り道私が何気なく『かわいい』と呟いた声を彼は聞き流さず、入ろうと言って雑貨店にも入った。
『記念になにか買おう』なんて言い出して、店員さんにカップルに人気なんですよと勧められたカップやお皿を買ったてみたり。まるでラブラブカップルだ。
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