541人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ん」
お布団気持ちいい。ぬくぬくだぁ。
抱き枕のウサギちゃん――。
――あれ?
ウサギが動いた?
目を開けると、私が抱えているのは、ウサギじゃなくて人の腕。
「えっ!」
私、一俊と寝てるの?
いくらなんでもいい大人が弟にくっついて寝るなんて!
錯乱状態で体を捻ると、ゴンッと頭が何かにぶつかった。
「イテッ」
「あっ! た、尊さん?!」
私を後ろから抱きかかえていたのは尊さんだった。
「ご、ごめんなさい」
私に頭突きをされて、顎に手を当てた尊さんは苦悶の表情だ。
「おはよう……」
「おはようございます! だ、大丈夫ですか」
「ダメ」
「ええ、どうしよう」
それもですけど、尊さん、裸。わ、私も、下着姿で。
「許さん」
ヌッと起き上がった尊さんは、いきなり私を押し倒し、両手をベッドに押し付けるようにして馬乗りになる。
「昨夜ケーキ買ってきてあげたのに、どういうことだ」
「え?、ケーキ?」
「罰として君は一生俺に尽くせ」
「ええー? ケーキごときで?」
クスッと笑った尊さんは、そのまま私の唇にキスをした。
「弥衣。言ってなかったけど、俺は君が好きだ」
――尊さん?
「あ、あの……、どこがですか?」
「うん。そうだな。それは追々」
でも、そこ重要なんですよ。
追々とか言ってないで今言ってくださいよと思うのに、尊さんは何かのスイッチが入ったようにキスを繰り返し、私を優しく撫でる。
くすぐったくて、気持ちよくて……。
そして、胸が熱い。
「なんで泣くんだよ」
尊さんは少し困った顔をして、私の涙を拭う。
だって、泣かずにはいられない。
私も、尊さんが好きだから。いつのまにか、すごく好きになっていたから。
繰り返すキスの合間に「好き」と言った。
ハッとしたように動きを止めて、尊さんは微笑む。
「愛してるよ、弥衣。お前だけだ。――ずっと愛してる」
最初のコメントを投稿しよう!