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抱き締められたまま、ふとお兄ちゃんと目が合った。
そのまま彼の顔が私に近付いて来る。
(キスされる!)
全てがやけにゆっくりと動いて、もう少しで私達の唇が触れる時。
「なんだか、香の叫び声が聞こえたけれど大丈夫?怪我とかしていない?」
そう、居間の方からお母さんに声を掛けられた。
反射的に私は彼を突き飛ばして、「大丈夫!転び掛けちゃっただけ。怪我はしていないよ!」と大きな声で返事をした。
お兄ちゃんの方を見ると、傷ついた顔をしていた。
「なあ、香。」
そう彼に話しかけられて、それ以上言葉を聞きたくなくて、
私は「ごめんなさい!」と言うと走って自分の部屋に逃げ出した。
そもままお兄ちゃんは外に出かけてしまって、いつもはお母さんと私が眠ってしまっている夜遅くに帰って来た。
それを何で知っているのかと言うと、私は眠らずに彼の帰りを待っていたからだ。帰って来たお兄ちゃんに声を掛ける事すら出来ないのが分かっていても、起きて待たずにはいられなかったのだ。
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