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突然の訪問
誰にも言えなかった私の初恋の話を聞いて下さい。
「え、お兄ちゃんが遊びに来るの?ずっと会っていなかったのに?何の為に?」
私、羽山香は驚いて、思わずそう聞いてしまった。
厳しくも優しいお母さんは眉間に皺を寄せて、それがねと言って話し始めた。
「なんでも、あの子は海外に留学して、そのまま向こうで就職するつもりなんですって。だから、中々日本に帰って来にくくなる前に、近い内に私達と会っておきたいとか。」
「そうだったんだ。でも、私はお兄ちゃんの事なんて、もうあんまり覚えていないよ。」
そう私が言うとお母さんは苦笑して、あの人と離婚した時、あなたはまだ小さかったからねと言った。
もう何となく察していると思うが、私の両親は随分前に離婚している。
理由は風の噂に聞いたのだが、お父さんの浮気だったそうだ。
そうして、私はお母さんに引き取られて田舎に住む事になり、2つ上のお兄ちゃんはお父さんに引き取られて都会に住む事になった。
離婚したので当然かも知れないが、私の両親の溝は深く、なんとなくお父さんに引き取られたお兄ちゃんとも疎遠になっていた。
この時、私はよく覚えていないお兄ちゃんの突然の訪問を面倒事ぐらいにしか考えていなかった。
まさか、後になって彼に自分があんな気持ちを抱くなんて思いもしなかったのだ。
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