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その日の夜、私とお兄ちゃんはお母さんと一緒にご飯を食べながら、普通の兄妹らしく振舞っていた。
「まあ、二人とも無事に大きくなってくれて嬉しいわ。これで孫を抱けたら言う事はないんだけれど。」
お母さんはニコニコと上機嫌でそんな事を言った。
「孫って気が早いですよ。自分の子供なんて、まだ全然想像付かないですし。香だってそうだろう?」
「う、うん。そもそも私は彼氏だっていないんだよ。」
私は彼女に対して後ろめたくて、すぐに口が動かなかったけれど、お兄ちゃんが先に話してくれたので、どうにか返事が出来た。
「わ、私、食べ終わったから、お皿持って行くね。ついでに、皆の使ったお皿とか、コップとかも洗ってくる!」
私がそう言うと二人は口々にありがとうと言ってくれた。
(やっぱり、こんな気持ちを持つのって親不孝だよね。もし、知られたらどんな反応をされるだろう…。)
そんな事をぼんやりと考えながら、黙々と食器を洗っていると、後ろから足音がした。振り向くと、お兄ちゃんがいて、すごくビックリしてしまった。
「きゃあ!」
「香!」
焦っていたのだろうか。体の向きを変えようとしたら、足首が変な風に曲がってしまって、転び掛けたのを彼に抱き締める形で支えてもらった。
心臓がやけに煩くて、多分顔が真っ赤だ。
何も考えられなくて頭が真っ白になったまま、私は心の中でぽつりと創一と彼の名前を呼んだ。
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