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それは私が通っている高校が夏休みに入った直後位のタイミングだった。
キンコーン。
それは家のチャイムの音だった。
その時、私は夏休みであるのを良い事に自分の部屋でゴロゴロしていた。
でも、お母さんが外出しているのを思い出して、渋々玄関まで行って対応する事にしたのだ。
私が玄関のドアを開けると、そこにはこの辺の田舎では滅多にみないようなカッコいい男の人が立っていた。
(え。誰、この人?どうしよう。もっと綺麗な格好をしておけば良かった!)
この時、私は一日外出しない予定だったので、化粧はしていなかったし、変なロゴが入っているTシャツに短パンと言う恰好だったのだ。
でも、彼はそんな事は少しも気にしないで、爽やかに微笑んでこう言った。
「ひょっとして、香か?随分美人に育ったな!あ、俺が分かるか?ほら、創一だよ。お前の兄貴だよ。」
「あ、お兄ちゃん?お母さんが遊びに来るって言っていたのって今日だったんだ。」
私は胸がドキドキして上手く思考が纏まらない中、どうにかこうにか、そう答えた。
(どうしよう。私、ちゃんと話が出来ている?なんか、変な奴だと思われていない?)
急に不安になってパニックになりそうだった時に、タイミングの良く、お母さんが帰って来た。
「あら、創。来ていたのね。折角だから、ゆっくりして行ってね。」
「はい。そのつもりです。短い間だけれど、よろしくお願いします。」
そんな会話をする彼らを私は棒立ちになったまま、ぼんやりと見詰めていた。
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