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そのまま二人で家への帰り道をゆっくり歩く。
少し潮の匂いのする風が気持ちいい。
「なあ。」
「うん?」
お兄ちゃんに声を掛けられて振り向くと、彼は真面目な顔をしてこちらを見ていた。胸がドキリとする。
「俺がこっちに遊びに来たの迷惑じゃなかったか。母さんからは香は、俺の事なんて碌に覚えていないって言われたし。」
「め、迷惑じゃないよ!じゃないと、こんなに一緒にいないし!」
初めてお母さんから話を聞いた時には、面倒だなと思った事をひた隠しにして、慌ててそう言った。
「確かに小さい頃に離れ離れになっちゃったから、あんまりお兄ちゃんの事は覚えていないけれど…。でも、今日一緒に海で遊んで新しい思い出が出来たし!」
私は何とかお兄ちゃんに元気になって欲しくてそう言うと、彼はクスリと笑ってくれた。
「それもそうだな。今日一日、楽しかった。」
「うん。これから一週間、ここにいるんでしょう?3日後にこの村で夏祭りが開催されるから一緒に行こう!毎年、出店が沢山出るし、大きな花火だって上がるんだよ!」
「それは行ってみたいな。でも、大丈夫か?さっきみたいに俺と一緒だと恋人とデートしているって勘違いされるぞ。」
そんなお兄ちゃんの言葉に、私は笑顔でこう言った。
「お兄ちゃんみたいにカッコいい男の人とデートしているって勘違いされるなら大歓迎!ちっとも嫌じゃないよ。」
すると、彼は照れたかのように顔を赤くさせた。
恐らく、この時からお兄ちゃんは私を女の人として意識をし始めたんだと思う。
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