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「話が少しそれてしまったけれど、動画のおかげで広告収入もいただけるようになったし生徒も増えたんだ。そんなわけで最近のここ最近の損益計算書がこちら」
気を取り直して本題をすすめることにした。
「カワウソくんが踊っています」
なかなかすすまない。ちょっと遊び心を出しすぎたようだ。
「そこじゃなくて、こっち」
花実来さんの目線を収益の項目に誘導する。
「赤色がなくなって白黒になりました。それに数字がやたらと多いです」
落ち着いたら花実来さんに簿記をすすめよう。
「黒字ってことだよ。それも、今月は収益100万越え。動画がバズったんだ。」
まさかここまでうまくいくとは思ってもみなかった。さすが花実来さんの生みの親である。
「単なる印刷ミスじゃないんですね」
「もちろん。だから、花実来さんは家のことを心配しなくていいし、家のことで縛られることもないんだよ」
「え?」
「つまりね、花実来さんも経済的に自由に一つ近づいたんだよ。今まで月12万の仕送りは一人暮らししながらはなかなかつらかったはずだ。それをしなくてよくなったら結婚相手の条件に男性の経済力を求めなくていい。経営が順調な家なら結婚も婿養子のハードルも低くなるはずだ。花実来さんは条件にしばられることなく恋愛をすることができるんだ。経済力のある次男じゃなくてもいいかもしれない」
「どうしてそんなこと言うんですか」
「思い込みで付き合ってほしくないから。広い視野で両目を開いて、その上で俺を選んでほしいから」
「葉山さんは私のこと過少評価しています。私は葉山さんの事が好きなんです。どんなに見晴らしのいい場所に行ったって、ありったけ両目を開いたって私が選ぶのは葉山さんです」
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