17.飯島瞬&沢裕介

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17.飯島瞬&沢裕介

「瞬、どしたの?」 「え?いや」 「知り合いでもいた?」 「違うけど、ちょっと」 「なになに」 「今、そこのケースの前にいただろ、俺たちと同じくらいの年の人」 「・・・・・・いた?」 「何も見えてねえな」 「選ぶのに必死だったんだよ」  瞬は少し黙ってから、ぼそりと言った。 「・・・・・・・あの人、二人分指輪買っていったんだよ」  瞬と裕介は女性客の多い中、ふたりで買い物に来た。男二人で指輪を買いに来て、裕介が思いの外あっけらかんとしていたのは幸運だった。それは一線を越えてからのことで、なにやら腹が決まったように見える。そのおかげで瞬も助けられていた。 「二人分?」 「そう、俺たちが見てたやつの横に、メンズラインあったろ。あれ」  その客はひとしきり悩んで、「これとこれ」と言ってサイズ近いの指輪を買って行った。連れがいない状態で男物のアクセサリーを二人分買っていけるハートの強さ。瞬はそれに感心していた。  裕介は瞬が考えていることと全く同じことを口に出した。   「ハート強いね」   「・・・・・・だな」 「俺らはさ、一緒にいるからなんとなく心強いけど」 「ひとりじゃ・・・・・・しんどいな、いろいろ」 「そうだね」  裕介はごくごく小さな声で、同じ状況の人に初めて会った、とつぶやいた。ゲイである瞬の周りには「仲間」が多いが、裕介の状況ならいたしかなたい。 「あ、でもさ」 「うん?」 「俺の友達、聡太ってやつの話、前にしただろ」 「ああ・・・・・・・」 「聡太の彼氏さんもさ、俺と同じらしいよ。男性とつき合うの、初めてだって」 「会ったことあるのか?」 「会うって言うか、見た、くらい。少し離れたところで、待ち合わせしてる二人を見たんだ。幸せそうだった」 「・・・・・・お前は?」 「え?」 「幸せか?俺といて」  裕介は目を見開いた。そして急に表情を曇らせたかと思うと、瞬から視線を外して言った。 「そんなこと、指輪買ったあと聞く?」 「裕介・・・・・・・」 「幸せじゃなかったら一緒に買い物になんか来ないよ。いまさら何言ってんの」 「そうか」 「そうだよ」 「だよな、昨夜あんなに・・・・・・」 「ちょっと!!」  裕介の顔が一気に真っ赤になった。 「そういうのマジでやめてもらえる?!」 「悪い悪い、つい」 「お前は少し恥じらいを持てよな!」 「恥じらいはあるぞ?幸せだと忘れちゃうだけで」 「瞬ってそんなタイプだったっけ?!」  裕介はぷりぷりしながらも笑っていて、照れ隠しなのがよくわかった。瞬は頬がゆるむのをこらえられず、そっと裕介の背中に腕を回した。  雑踏の中、自分たちの関係がどう見られてもかまわないと思えた。
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