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 「う、うわぁ……」  情けない声――安川だ。オドオドと後退ったかと思うと、後ろを向いて逃げ出した。  エリカはゆっくりと振り向きナイフを構え、華麗なフォームで放つ。  宙を飛んだナイフが、安川の背中、丁度心臓の裏側に突き刺さった。  「あがぁっ!!」  安川の足が止まり、その場に膝立ちとなる。  エリカは彼に歩み寄ると、肩に手をかけ、背中のナイフを抜いた。  「狩られる側の気分はどう、先生?」  そう言って微笑むと、彼女は安川の延髄をナイフで破壊した。そして「遊びも程々に、ね……」と耳元で囁く。  骸となった安川がその場に倒れた。  「この車、下まで借りるわね」  安川のベンツまで歩み寄り、振り向くエリカ。微笑みながらこちらを見ている。   「スリルがあって楽しかったわ、島津さん、岡田さん。あなた達みたいな人、けっこう格好いいわよ」  ウインクをしてベンツに乗り込むと、彼女はあっという間に走り去って行った。  「助かったんだな、俺達。しかし、すごい場面を見ちまったな……」  呆然としながら岡田が言う。島津は何も応えられなかった。  あれが漆黒の華、エリカか……。  また、どこかで会うことができるだろうか?  そんな期待を込めながら、島津は彼女が去っていった方をいつまでも見つめていた。                                    Fin 
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