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「告白者が殺された?」
嶋津浩一は目を見開きながら聞き返した。
「ああ、そうだ。安川晋三郎の元支援者だ。政治的な思想に共感していたらしいが、その人格を知って驚き、どうしても許せないと思って警察に相談したが、翌日に何者かに拉致された。そして、一週間後に丹沢の山中で動物に食い荒らされた死体が見つかった。遭難で片づけられたが、極秘情報によると銃で撃たれた痕があったらしい。それも有耶無耶にされた、ってわけさ」
岡田保が苦々しそうな表情で説明する。彼はフリーのジャーナリストであり、様々な雑誌やサイトに硬派な記事を書いていた。政府への批判や財界の腐敗を指摘する内容が主で、人気はあるが敵も多い。
「おまえ、それを記事にするつもりなのか?」
嶋津が訊くと岡田は首を振った。
「今そんなことをしても、俺が潰されるだけだ。もっと証拠を掴みたい。だから協力してほしくて、相談に来た。あんたくらいしか頼れる相手はいないんだよ」
岡田はそう言って嶋津を鋭い視線で見る。
嶋津は公安警察に属する捜査官だ。岡田とは所轄にいる頃に知り合い、何度か同じ事件で出くわして話をするうちに意気投合した仲だ。もちろんマスコミ関係者だけに、警察の情報を闇雲に教えたりはしない。ただ、捜査対象者に揺さぶりをかけるためにブラフの情報を流してもらうなど、お互いに協力し合ってきた。それにしても……。
「今回ばかりは、かなりヤバイ案件になるぞ。お互い覚悟をした方がいい」
睨み返すようにしながら、嶋津が言う。
安川晋三郎は与党民事党所属の代議士だ。48歳と政治家としては若手で、近々入閣も期待されている。
「わかってるよ。たぶん俺も目をつけられた。下手をすれば命を狙われる。だから、あんたの所に来たんじゃないか。ここも用心に越したことはないけどね」
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