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これまでか……。
島津と岡田は悔しそうな顔をしながら高松を睨みつけた。
他の男達が駆け寄ってくる。
その時……。
何かが風を切るような音が、微かに聞こえた。次の瞬間、島津達に近づいてきていた男達が、バタバタと倒れる。
え?
驚いて見ると、彼らの胸に細いナイフのような物が突き刺さっていた。
「まさか……」
岡田が息を呑みながら、おそらくナイフが飛んできたと思われる方を向く。島津もつられて見た。
そこには、黒いライダースーツを身につけた、見事なプロポーションの女性が立っていた。セミロングの黒髪が風になびいている。
足下には警察官の制服が……。
あれは、利香?
ハッとなる島津。下にあんな物を着込んでいたから、だぶついていたのだ。そして、髪を下ろし眼鏡を外したその顔は、別人のように美しい。
「噂があった」岡田が呟く。「安川の狩りの被害者遺族が、復讐を依頼したらしい、と。相手はトムという一流の情報屋。そして、トムが組織化した悪党だけをターゲットにする暗殺者集団で、近年噂の女性暗殺者が……」
「知っている。俺もあくまで噂で聞いただけだが、漆黒の華と呼ばれる美貌の女性暗殺者……」
島津と岡田が呆然としたような表情で状況を見守る。
「貴様……!」
高松が銃を手に、女性を睨みつける。
「告白します」女性がフッと笑みをうかべながら言った。「私は暗殺者、エリカ。ターゲットは、安川晋三郎」
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