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 区内の繁華街のはずれ、寂れた路地の奥にある2階建てマンションの一室だった。この部屋以外は空室だ。実は、嶋津の班が極秘に使っている。重要な証人や被害者を匿ったり、容疑者を尋問するためだ。  「ここは俺たち公安の一部にしか、知られていない」  それでも岡田は不安そうだ。  「安川の配下には、腕の立つ始末屋がいるらしい」  「始末屋?」  「ああ。邪魔になったヤツ、暗部に気づいたヤツなんかを、闇で始末する」  「それは聞いたことがある。もうそいつらがおまえを狙って動き出したというのか?」  「その可能性は高いよ。しかも、その始末屋は、もしかしたら警察の中にいるんじゃないか、とも言われている」  あり得ないとは言い切れない。安川に敵対する人物を探るには、警察、それも公安関係者が最適だからだ。また、安川の親しい議員には警察官僚出身者も多い。その伝手で利用できる人材を発掘したということは、十分考えられる。  「告白者が丹沢の山中で遺体で発見された裏にも、その始末屋達が絡んでいるに違いない。俺に通じていたということは、たぶん掴まれている」  「ふうむ」と呻る嶋津。とりあえず事の全容を知っておいた方が良い。そう思い質問を繰り出す。「相当なことなんだろうな、安川の暗部っていうのは?」  岡田の表情には怒りと嫌悪感が表れた。  「安川は人間じゃない。あんなヤツが政治家なんて、許せない」  あまりにも激しい口調に、嶋津は息を呑んだ。そして先を促す。  「安川の趣味は狩猟だ。で、これは極秘にもみ消されたが、ヤツは昔、誤って人を撃ち、死なせている」  「なんだって? 本当か?」  事実なら政治生命が終わるだけではない。相応の刑罰を受ける必要がある。  「しかも、それだけじゃないんだ。その事件を機に、ヤツは危ない嗜好を持つようになったらしい」  「危ない嗜好?」
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