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「マン・ハンティング。つまり、人狩りだよ。人を撃つことに快感を覚えるようになった安川は、始末屋に邪魔な人間を拉致させ、どこかで獲物にして撃ち殺している、という話だ。最近では我慢が効かなくなり、ホームレスやいなくなっても怪しく思われない裏社会の人間なんかもさらっているらしい」
「そんなことを……」
それは、確かに人のやることではない。
「安川を調べていた東横新聞政治担当記者が、そのことに気づいた。俺に話を持ってきた元支援者と協力して糾弾しようとしたらしいが、行方不明になった後に遺体で発見された。これも丹沢山系に連なる場所で、崖から落ちたと言われている。しかし、やっぱり銃痕はあったんだよ。地元の警察官が見ている。だが、解剖にまわされることなく処理された。おそらくこんな事は、まだたくさんあるんだろう」
背筋が凍るような思いがする。それとともに、怒りも湧いた。
許すことはできない……。
そんな時、嶋津のスマホが鳴った。個人用ではなく、所属する班の物で、これで連絡をとり合う相手は公安捜査官だけだ。受信し「はい」と端的に応える。
「高松だ」
相手も端的に言った。意外な人物だったので「え?」と訊き返す。
高松要次。嶋津の先輩で、今は別の班にいる。
「手短に言おう。今おまえが保護している人物と接触したい。安川晋三郎を調べているんだろう? 実はうちの班が同じようにヤツを調べている。協力できるならこちらにとっても朗報だ」
「ちょっと待ってください」
そう言って保留にし、岡田を見る。そのままを説明し「どうする?」と訊いた。
「信用できるのか、その高松という男は?」
怪訝な表情になる岡田。
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