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 最後部座席の真ん中に嶋津は座らされていた。右に岡田。彼はさっきから窓の外を睨んでいる。逃げるチャンスを探しているようだが、今の状況では無理だ。  左には女性警察官がいた。窓側に寄りかかり、失神したまま揺れている。  サイズが体に合っていないのか、制服が少しだぼついていた。髪の毛はお団子にして後ろにまとめているが、所々跳ねている。度の強そうな銀縁メガネが今は少しずれていた。まだ若いが、おしゃれには気を遣わないタイプなのだろうか?  いずれにしろ、あまり頼りになりそうではない。 これでは、圧倒的に不利だ……。  どうすべきか思案する嶋津。向かっているのはたぶん丹沢山系のどこかだろう。これまでの被害者と同じように、山奥で狩りの標的にされるのだ。  「うーん……」  微かな声が聞こえた。女性が目を覚ましたようだ。  「大丈夫か?」  小さく声をかける嶋津。岡田もこちらを見た。  「あっ?! けほっ、けほっ」  少しむせた後、彼女は嶋津の方を向く。  「俺は嶋津浩一。警察関係者だ。君は?」  「き、北山利香……。港西署の地域課に所属しています」  律儀に説明する利香。  「ほう、利香ちゃんか」前の座席の高松が振り向きながら言った。「かわいそうになぁ、こんなことになって。これから狩りの獲物だよ。嶋津と岡田は猪、利香ちゃんはウサギ、っていうところかな?」  「いったいどういうことですか?」  脅えた表情で、誰にともなく訊く利香。  「こいつら悪党に捕まったのさ、俺たちは。君はそれに巻き込まれた。すまないな」  岡田が言った。嶋津も溜息混じりに頷く。  「そんな……」  蒼白となり息を呑む利香。慌てて制服を確かめるが、無線も銃もすでにとりあげられている。  残るのは絶望だけだ。
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