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4
しばらく車に揺られた後、着いたのはやはり山中だった。
森林を抜けると野原が開ける。その端にコテージふうの建物があった。車が3台停められていて、そのうちの1つ、もっとも高級なベンツの横に、猟銃を持つ男が立っている。
近づくにつれ、その顔も認識できるようになった。間違いなく安川晋三郎だ。
ワンボックスから男達が降りていく。エンジンは止まったが、キーはダッシュボードの上に置きっぱなしだ。
島津はそれらを確認すると、岡田と利香に小声で端的に指示を出した。
「俺が連中を引きつけて時間を稼ぐ。その隙にこの車を奪え」
岡田は表情を強ばらせたが頷いた。利香は息を呑む。
「さあ、おまえらも降りろ」
高松が中央のシートを倒しながら命令してくる。
島津は素早く動き、高松の前に飛び降りるようにした。そして安川に向けて大声で話しかける。
「安川先生、俺は利用価値があるぜ。こんなヤツよりずっとな」
高松を顎で示しながら言う。
「とち狂ったか?」
ギロリと睨んでくる高松。島津はそれを無視し、安川に話し続ける。
「あんたの政敵、維新党の大島慎二代議士は、俺を気に入ってくれている。いろいろと協力し合っているんだ。だから、彼の情報はたっぷり持ってるぜ。あんた、欲しいんじゃないか、あいつの弱みとか。それに、俺が行方不明になれば大島代議士はあんたを疑うだろう。それとなく話をしておいたからな。俺を殺すのは損ばかりだぜ。高松を捨てて俺を雇え。そうすれば、あんたにいい思いをさせてやる」
もちろんはったりだ。だが、もっともらしく見せるために、自信ありげな笑みをうかべた。
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