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 しばらく車に揺られた後、着いたのはやはり山中だった。  森林を抜けると野原が開ける。その端にコテージふうの建物があった。車が3台停められていて、そのうちの1つ、もっとも高級なベンツの横に、猟銃を持つ男が立っている。  近づくにつれ、その顔も認識できるようになった。間違いなく安川晋三郎だ。  ワンボックスから男達が降りていく。エンジンは止まったが、キーはダッシュボードの上に置きっぱなしだ。  島津はそれらを確認すると、岡田と利香に小声で端的に指示を出した。  「俺が連中を引きつけて時間を稼ぐ。その隙にこの車を奪え」  岡田は表情を強ばらせたが頷いた。利香は息を呑む。  「さあ、おまえらも降りろ」  高松が中央のシートを倒しながら命令してくる。  島津は素早く動き、高松の前に飛び降りるようにした。そして安川に向けて大声で話しかける。  「安川先生、俺は利用価値があるぜ。こんなヤツよりずっとな」  高松を顎で示しながら言う。  「とち狂ったか?」  ギロリと睨んでくる高松。島津はそれを無視し、安川に話し続ける。  「あんたの政敵、維新党の大島慎二代議士は、俺を気に入ってくれている。いろいろと協力し合っているんだ。だから、彼の情報はたっぷり持ってるぜ。あんた、欲しいんじゃないか、あいつの弱みとか。それに、俺が行方不明になれば大島代議士はあんたを疑うだろう。それとなく話をしておいたからな。俺を殺すのは損ばかりだぜ。高松を捨てて俺を雇え。そうすれば、あんたにいい思いをさせてやる」  もちろんはったりだ。だが、もっともらしく見せるために、自信ありげな笑みをうかべた。
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