告白したらあわよくば好きになってもらえるって本当ですか

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 体育館の裏の端っこに八木くんとふたりきり。  少し懐かしい、ふたりだけのひとときだ。 「俺はさ、初めて蓑島が告白してくれたとき、すごく嬉しかったんだよ」 「え……」  そうだったんだ。八木くんにはあっさり断られたけどね。 「まさかだった。蓑島は教室でも俺とあんまり話してくれないし、そもそも男同士、だもんな……」  地味な僕にはキラキラした八木くんに教室で話しかけることなんて畏れ多いことだ。でも僕は密かにずっと同性の八木くんに憧れを抱いていたんだ。  でも八木くんはそんな僕の恋心に、僕が告白するまで気がつかなかったんだ。 「最初は蓑島のことよく知らないし、真剣な告白を適当な気持ちじゃ受けられない。それで断ったんだけど、蓑島はそこから俺に毎月告白してきて……」 「しつこくてごめん……」 「いや、あの……それが、可愛くて……」  か、可愛い?! 「だってギャップがすごいんだ。蓑島は普段は俺と目も合わせてくれない。他の奴とは明るく話をするくせに、俺にだけあからさまに塩対応だろ? 俺、正直なところ蓑島に嫌われてるんだとばかり思ってた」  塩対応……。僕にはそんなつもりはなかった。他の人なら普通に話せるけど、八木くんだけは極度の緊張で上手く話せなかっただけだ。 「そんな蓑島が一生懸命、俺に気持ちを伝えてくる。俺のことを好きだって、付き合ってくれって言うんだ。そんな姿をずっと見てたら俺、なんか蓑島のこと……抱き締めてやりたくなってきて、付き合ってみてもいいかな、なんて……」 「え!!」  いつから?! 何回めの告白からそんな奇跡が起きてたんだ?! 「そんなとき、榎戸に言われたんだ。蓑島は俺に十二回告白してもダメだったら俺のことを諦めるつもりだって」 「十二回? 十回の間違いじゃないの?」 「あいつわざと嘘をついたんだ。俺、榎戸は蓑島の親友だと思ってたから、榎戸に蓑島のことを相談した。でも、実は榎戸も蓑島のこと、好きだったんだな……。だからあいつは邪魔をした」  榎戸は僕の相談にのりながら、八木くんの相談にものっていたんだ。 「俺が榎戸に『蓑島と付き合いたいけど、付き合ったらあの可愛すぎる告白をしてもらえなくなるのが寂しい』ってこぼしたら、十二回目の告白で蓑島と付き合えばいいって。それまでは蓑島は毎月告白してくるからって」  僕はハッとする。  榎戸は、僕が十回八木くんに告白して振られたら八木くんのことを諦めることを知っていた。だから理由をつけて僕が十回八木くんに振られるように、八木くんをけしかけたんだ。 「でも、まぁ、俺も俺だ。告白する蓑島の姿が可愛いからって、蓑島の告白を断り続けてきた。本当は蓑島のことを好きになってたのに。蓑島と付き合いたいって思ってたのに。そんなことしないでもっと早く蓑島の告白を受け入れるべきだったんだ」  や、八木くん今なんて言った? 僕のことを好き?! 「蓑島。俺にいつも告白してくれてありがとう。今日は俺が蓑島に告白します」  目の前にいる八木くんはうっとりするくらい優しい目で僕を見つめている。 「蓑島。好きだ。俺と付き合ってください」  こんな奇跡あるのだろうか。八木くんが僕のことを好きになってくれるなんて。  気がついたら僕の目に涙が滲んでいた。  僕が震える声で「こちらこそお願いします」と言うと、八木くんは僕の身体を抱き締めてきた。  告白したらあわよくば好きになってもらえるって本当ですか?!  ——完。
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