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「蓑島、コンビニ行く前に公園に寄ってもいい?」
榎戸は僕を公園に誘った。一ヶ月前、八木くんに振られた僕を榎戸が慰めてくれた公園だ。
榎戸はあのときのベンチの前まで来て、僕を目の前に立たせてひと呼吸おいたあと、口を開いた。
「蓑島。俺は蓑島が好き。どうか俺と付き合ってくださいっ!」
榎戸は頭を下げ、握手をするときみたいに僕に右手を差し出してきた。
榎戸からの二回目の告白だった。冗談かと思っていたのに、榎戸は僕に二度目の告白してきたんだ。
「榎戸……」
どうしよう。どうしよう。
でも、やっぱり榎戸は友達としか思えない。榎戸はいい奴だけど、僕がキスしたい、抱き合いたいと思うのは八木くんだ。
「ごめん……なさい……」
恐る恐る僕が答えると、榎戸は「あー! また振られたぁー!」と頭を抱えていきなりシャウトした。
「はいはいわかってましたよ、蓑島次はコンビニ行こうぜ!」
榎戸はさっさと歩き出した。どうやら榎戸は僕が告白を断っても、友達でいてくれるスタンスらしい。
「うん」
榎戸は優しい。僕の初恋は叶いそうにないが、僕は友人にだけは恵まれたらしい。
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