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「榎戸っ! お前ふざけるな!」
僕が榎戸に返事をする前に、乱入してきたのは八木くんだ。
「蓑島は来ないって俺に言ったくせに、今ここにちゃんと来てるじゃないか! 俺はもうお前に騙されない」
八木くんは榎戸に対して怒ってる……?
いったいどうして……。
「蓑島は俺に一年間、毎月告白するつもりだって言ったのも嘘だったんだろ?」
一年間? つまり十二回告白するってこと?
「榎戸、どういうこと?」
僕が榎戸を見ると、榎戸は青ざめている。榎戸はいったい八木くんにどんな嘘をついたんだ?
「聞け、蓑島。榎戸は今日の昼休み、俺に『蓑島は気が変わって約束の場所へは行かない。それを蓑島から伝言するように言われた』と俺に嘘をついたんだ」
「なんで……」
「俺と蓑島の仲を壊したかったんだろ?」
榎戸がそんなことを?!
僕には信じられない。榎戸は一番の味方だと思っていたのに。
榎戸は八木くんになにも反論しない。その態度からして、八木くんの言うことは正しいのかもしれない。
「蓑島。ついてきて」
僕は八木くんに手を掴まれた。そのままぐいっと引っ張られて、僕は八木くんと一緒に駆け出した。
榎戸は僕たちを追ってこなかった。
いつも遠くから眺めていた八木くんの背中。今、僕はそれをすごく近くに感じている。
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