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「ぼ、僕と付き合ってくださいっ!」
僕は放課後に八木くんを体育館の裏に呼び出して、愛の告白をした。
告白するにはベタな場所だけどそれでいいんだ。だって僕は所詮ただの凡人だから。
八木くんは僕の片想いの相手。背が高くて顔が良くて、勉強もスポーツもできる。性格も親切で男前で、非の打ち所がない。学校一モテてる現役の生徒会長。
「蓑島ごめん。無理だ。お前とは付き合えない」
「だっ、だよね、わかってたよ……」
八木くんに振られるのは想定内だ。でもこれが僕にできる唯一の方法だから。
「あっ、ありがとう八木くん、それじゃまたね!」
僕は振られても、いつも潔く八木くんのもとを去ると決めている。だってしつこくしたら八木くんは僕の告白を受けてくれなくなるんじゃないかって思うから。
最悪、八木くんに嫌われて、話すらしてくれなくなるんじゃないかって不安だから。
僕が八木くんにふられるのはこれで十回目。
毎月三日に、僕は八木くんを呼び出して告白をしている。三日が日曜日のときは前日の二日に告白した。
つまり、十ヶ月間、毎月僕は八木くんに告白をし続けている。
もちろん0勝10敗だ。
それでもよかった。相手が八木くんで、この恋は到底叶いっこないって最初からわかってた。
でも僕はこんなにも真剣に人を好きになることができたんだ。それが実らなくても幸せなこと、だよね。
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