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「ど……どうでした?」
「……これ、おれッチで作ったの?」
「そうですよ。あの紙に穴を開けて、あの機械に通したら……詳しい仕組みはよく分かんないんですけど、機械の中のピンがあの穴に引っかかって音を出すみたいなんです。」
「おれッチが空けた穴でこの音がなー……にしてもダッセーなこの曲。」
「初心者向けの簡単な楽譜ですからね、私も初心者ですし。時間をかけて頑張ればきっともっとすごい曲やオリジナルの曲だってできるはずですよ。」
「ふーん初心者じゃあしゃーねぇか、んじゃ今回はこれで勘弁してやるからもう一回まわせ。」
「はいはい、わかりました。」
そうこう言いつつも、自分が紙に開けた穴によってオルゴールが音色を紡いでいく様子を見た穴あけパンチの感情がいい色に染まっているのが声色から見て取れた。その色は私が初めてテレビの画面越しにディスコフロアの輝きと熱狂を見た時の感情にきっとよく似たものだろう。そんな穴あけパンチの声を前にしたら、もう一度音楽を奏でない訳にはいかないというものだ。
きっと穴あけパンチさんは、仲間の文房具や職人さんが迎えに来るか、私が穴あけパンチさんを職人さんの所に持っていくまで、この静かな夜のような音楽に浸っているのだろう。
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