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ふと考えてみたのだが、穴あけパンチは折紙作品を作るにあたってどれだけ使う機会があるのだろうか。折り紙に関しては素人な為あまり深く提言するべきでないとは思うのだが、意志を持ったという文房具達の中でも、輪ゴムやホッチキス等、一見直接折紙に携わる事はないであろう道具も幾つかあった。だがわゴムは折紙を束ねるのに使用し、ホッチキスは折り目を固定するのに重宝するのだろう。しかし穴あけパンチは何に使うだろうか。
作品の装飾として穴を開ける事もなくはないのかもしれないが、それで何か際立つ物が作れるのかと考えると、職人さんならもしかしたらとは思うのだが少なくとも私には思いつかない。保管の為に穴を開けて紐を通すとその折り紙はもう作品には使えなくなってしまうだろう。
先程あれが言っていた自分が紙に携わるとどちらもゴミになってしまうとはつまりは自分が紙を用いると、穴を開けた紙も、自分の中にある丸い紙切れもダメにしてしまうという、穴あけパンチのコンプレックスというものなのだろうか。
「よかったらこの手回しオルゴール、パンチさんに差し上げますよ。」
「マジで!?いいの!?」
「あ、でも回す人……職人さんが大変かな……」
「あー大丈夫大丈夫、セロテが回るのチョー得意だから、あいつだったら幾らでも回せるっしょ。」
「問題ないなら……まぁ、いいか。」
セロテ、多分セロハンテープの事だろうが、セロハンテープが回るというのはあのテープスタンドとセットになってということだろうか、そのセロハンテープには恐らく過重労働が待っているであろうがここは申し訳ないが見て見ぬふりをさせてもらった。
過重労働と言えばひとつ思い出して欲しい事がある。私は仕事を終え、もといフロアを最高潮に沸かせる為にCDをターンテーブルの上で滑らせ、つまるところは右手を酷使して家に帰ってきた。その状態で私は今、穴あけパンチの為に手回しオルゴールのハンドルを回している。
せめて今日のこの透き通るような音色が、そんな穴あけパンチが抱いていた感情を少しでも洗い流してくれていることを私は願う。そうでもなければ今から犠牲になるであろう右手が報われない。
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