穴あけパンチのNocturne

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ひとまずテーブルに穴あけパンチを置き、仕事で使ったCDを元あった場所に戻しながら、引き続きそれと話をしていた。 「あの、パンチさん、何でうちの玄関先に居たんですか?職人さんは?」 「は?あいつ関係ねーじゃん。」 「いやパンチさん職人さんと関係なくなったらパンチさん廃棄物じゃないですか!?えっ、まさかパンチさんここに捨てられちゃったんですか!?」 「うっせ。」 「たっ!?」 穴あけパンチは中に溜まっていたらしい丸い紙屑を鉄砲玉のように私目掛けて発射した。 流石にあの時の巨大な穴あけパンチからマリオに放たれたペーパービートのようなダメージは無いものの、振り向いた私の額を少し赤く腫らすには十分だった。 「んなわけねーじゃん、職人さんだぞ職人さん、赤ちゃんの時に貰った色鉛筆後生大事に使い続けてるような奴だぞ。」 「いてて……すみません、そうですよね……ってこれ!?」 「何だよ、今度はペラペラの顔じゃねーだろ?」 私は穴あけパンチに当てられた丸い紙切れを見てふと気が付いたと同時に再び声を上げた。 確かにこれは生まれながらに色を持ったキノピオのものでも機械によって染色されたものでもない。紙の質感を残したまま優しく繊細な色が与えられている。 件の騒動がきっかけで職人さんの文房具が意志を持って動き出したと前述したが、それは穴あけパンチに限ったではない。その中でもこのように紙に色を与える文房具があったことを私はすぐに思い出したのだ。 「そうですけど、これ……イロエンピツさんの絵じゃないですか?イロエンピツさんの絵に穴開けちゃったんですか!?」 「あぁそうだけど?だったら何だよ?」 「そんなことしたらダメじゃないですか!これも、これもきっと一生懸命描いた絵の筈なのに……!!」 「あぁ~ん?お前にアイツの何がわかるワケ?大して話した事あるワケでもないってのにさぁ?」 「そ、それは……」 「ほんとにアイツがこれを一生懸命描いたと思う?アイツだって好きで描いてるのに?」 「そりゃあ……私だって、DJ好きでやってますけど、だからって一生懸命やってないわけじゃないですから……痛っ!?」 確かに、本体はおろかそれが描き上げた作品さえたった今見た数ミリの丸い紙屑でしか知らない私がその意志を決め付けるのは烏滸がましいかもしれない。ただだからといってイロエンピツの作品に軽々しく穴を開けていいものでは無いというのも穴あけパンチには理解して欲しかったのだが、というところで2発目の紙屑が眉間に直撃した。
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