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「あーそう、そういう事。だってさー、やりたい事やったら褒められるんだったらそれでいいじゃん、これ以上の幸せがあるか!?」
「や、それは……よく分かりませんけど……でも私も大好きなDJを褒めて貰えるのは嬉しいですね。」
他にも沢山幸せな事はあるはずではあるのだが、私が今の穴あけパンチにそれを説くにはお互いにまだ早い。
「だろ?だろ!?何が不満だってんだよ何がつまんねーんだよおかしいだろ!?絵を描くことしか出来ないって、絵が描けるんだろあいつは!?じゃあおれッチは何なんだよ、穴開ける為だけに作られたおれッチは!?アイツの話で言えばおれッチはゴミ同然じゃん、そう言いたいんだろアイツは!!」
穴あけパンチの言葉は怒りを燃料にしてよく燃えている、これはそう簡単に止まりそうにない。それはもう私が捕まっていた時にDJとして流した曲が尽く気に入らずに騒いでいた不平不満は大分マシな方だったのだと思い知らされるぐらいにはやかましく、ただひたすらに同じような事を怒鳴り散らしながらテーブルの上を転がり回っている。今の穴あけパンチの大きさからか近所迷惑になる程の騒音や声量でもないのが幸いだ。
「つまりパンチさんは……前々からイロエンピツさんの事が気に入らなくて、よく喧嘩してたけど、今回その喧嘩の中でイロエンピツさんが、『絵を描くことしか出来ない自分に突っかかっても意味無いでしょ』みたいな事を言われた事が決定打で、本気で怒った……って事で合ってますか?」
「あー、うん、そんなところ。
『絵を描くことしか脳がないミーに構ったところで時間の無駄ざんスよ、さっさとどっか行って踊ってた方が有意義じゃないざんスか?』って。
どうよおれッチのモノマネ、超絶似てんじゃん?」
「え?えーと、元々どんな声の方なのか分からないので何とも……」
「んだよノリ悪ぃなぁ。」
穴あけパンチが撒き散らしている声の端々をかき集めて、言っている事をまとめてみた。すると言いたいことが通じたからなのか、自分でも不透明だった不満点が分かったからなのか、これから放たれていた騒音がピタリと止んだ。
そして口には出さなかったものの、穴あけパンチはイロエンピツが絵を描けるという事に対して非常に強く羨んでいるのも間違いないと思っている。絵が描けるということ自体ではない、秀でた技術、人の役に立つ技術を一つ持っているという事に対して、嫉妬にすら近しい感情を持っているようにも見える。
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