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しかしそれでは穴あけパンチがまるで何もできない、秀でた技術が何もないと思っているようではないか。これは生まれた時は何も持たず徐々にスキルを身につけていくような人と違う、れっきとした穴を開ける道具なのだ。
生産された時からその役割は決まっており、あの時私達キノピオの顔に綺麗な穴を開けていったように、穴を開ける技術は誰にも負けないのではないだろうか。
「でもその……パンチさんも穴を開けるの得意ですよね、イロエンピツさんの絵を描く事と比べても意味は無いと思いますけど……」
「あんの!!めちゃくちゃ意味あんの!
オマエらペラペラはさ、飯食いてーとか寝みぃーとかあるらしいじゃん、多分それとおんなじ感じでおれッチ達ブンボー軍団はやりたい事がバラバラなんだよ。セロハンテープだったら貼りてーとか、わゴムだったら縛りてーとかまとめてーとか。もちろんおれッチは穴あけてーってなるわけ。オーケー?」
「お、オーケー……」
つまり意志を持った文房具達にとって、意志を持った事により新たな活動に興味を持ったとしても、それ以上にその文房具本来の使い道を行いたいという欲求が文房具達の本能のようなものとして存在し続けている、と言いたいのだろうか。ひとまずそうであるという前提で話を続けてみる。
「ですが、それだったらイロエンピツさんだって、描きたいって欲求があるだけじゃないですか。でもそれだけじゃきっと素敵な絵は描けないですよ。私は絵を描かないんで詳しくは分かりませんけど……ほら、白って200色ぐらいあるって言うじゃないですか。だからきっと、この色で塗るにはあの色の色鉛筆とこの色の色鉛筆を使って塗って……って色々考えたり試したりしてるはずです、それで段々と素敵な絵が描けるようになったんだと思いますよ。」
「そう!そこなんだよそこ!イロエンピツが色鉛筆を使ったら絵ができんじゃん?ハサミがはさみを使ったら切り絵とかできんじゃん?
じゃあおれッチは?穴あけパンチが穴あけパンチ使ったら?何ができる?」
「二つ穴ファイルに保存できるようになりますね。」
「それじゃあダメなんだよ、保存終わったらその紙は最終的にゴミになるだけじゃん!
結局さ、おれッチ使っただけじゃなんかイイもんできるどころか穴開けた紙は裏紙にすらできずに捨てるしかねーんだよ、穴開けた紙くずも、ポイントじゃねーんだからためても何もイイことねーしさ。
しかも、おれッチがどれだけ頑張ったってさ、穴あけるスキルが上がるわけじゃねーじゃん、同じ直径のキレーなまーるい穴を同じ間隔で2つ、一度に穴あけできるのはペラペラ10枚まで、どれだけ頑張っても一度に15枚穴あけれるようにはなれねーワケ。分かる?」
「確かに……うん、そうですね、なのに一番それが出来ているイロエンピツさんがそれを誇りに思っていないなら……怒りたくなりますよね。」
「だろ?だろ!?ふっざけんなって話だよなやっぱ。」
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