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それから。
私たちは幾日も幾晩も語り合った。
言葉少なな彼女の睦言は拙く、けれどもだからこそ真摯だった。
そのひとつひとつに私は頷き、あるいは言葉を重ねた。
お互いの気持ちを言葉にして、お互いの気持ちを体に示した。
肌を重ね始めたときには彼女はたどたどしいながらも積極的だったけれども、慣れてこちらからも求めるようになった今ではすっかり受け身になってしまっている。
不器用な彼女にはそのほうが性分に合っているのかもしれない。
それに、私はこう見えても一応、勤勉を自認しているのだ。新しく学ぶのは決して嫌いではない。それが彼女のことであればなおさらに。
ともあれ、それでもふたりは未だに主従の関係だ。
私は契約の期間が終わるまではそうするべきだと思っているし、それについては彼女も理解してくれている。
いつか全ての清算が済んで本当の自由を手に入れたとき、私は初めて彼女となんの主従関係もない、本当に対等の立場で想いの丈を交わし合えるのだ。
それまでは、まだしばし花咲くのを待つ日々を続けよう。
芽吹きを待つ愛おしい日々を。
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