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─9─
「寝坊だ! 何で健治、起こしてくれないのよ!」
慌てて着替えをし、下へ降りる。
「おはようございます! すみません、寝坊しました……」
「おはよう、美月ちゃん。大丈夫よ。餌やりは健治に任せて先にご飯食べちゃいましょ」
お義母さんは茶目っ気たっぷりの笑顔で、私に言った。
お義母さんは、私を本当の娘のように大切にしてくれている。そして、私も本当のお母さんのように慕っている。
そんな楽しいお義母さんとの食事の時間を切り裂くように、また、善行の放送が始まった。その瞬間、お義母さんの顔が少し強張ったように感じた。それを見て、やはり何年経っても善行は慣れないものなのかもしれないと悟った。
「今日は、誰なのかしらね」
声から、不安が読み取れる。
「そうですね。また、健治ってことはないですよね?」
「うん、たぶんね……」
放送に集中する。
「安藤さんって、うちの近所だわ。今回は夫婦二人で善行なのね……」
二人で善行をすることもあるのか。二人ということは、より大変な任務ということなのか、それともターゲットが複数人だということなのだろうか。
色んな妄想が、頭を駆け巡りながら講習の準備をする。
そう言えば、赤井さん、今日は来るのだろうか。体調戻っていればいいのだけれど。
「お義母さん、行ってきます」
善行のことを気にしながら、講習へ向かった。
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