とうとうやって来た瞬間

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翌日、私は副社長から頼まれたお使いで会社から一番近いデパートまで来ていた。 お使いは、副社長が午後から会う予定のお客様へのお土産何で昨日までに用意して置かなかったのかと言うと、お相手からの要望により副社長が急遽お会いする事になったからに他ならない。 連絡ノート及びPCには、和菓子がお好きとだけ書いてあった。しかし具体的な商品名が無かったのには正直困った。 それならば春らしい飾りつけが綺麗な上生和菓子がいいだろうとスマホで検索しデパートに直接買いに来た訳だ。 日持ちがしない上生和菓子の繊細さ、美味しく召し上がって頂きたいな。洋菓子と比較するとどうしても派手さには欠ける生和菓子。それでも控えめながら、可愛らしくその繊細さは和生菓子ならでは。和菓子とはいえ生の為二、三日が賞味期限かと思われるが出来る限り、お客様には当日中に食べて欲しい所である。 水分が多いだけに日持ちがしない所がまた扱い難くてもまた風情があるものだから。 ひとつひとつ、職人が丁寧に手作りしてるからどうしても量産は出来ないし、日持ちもしない大量生産できないゆえ自ずと値段も高くなる。 私は何種類かの生菓子を十個選び箱詰めと包装をお願いして、脇目も振らずに急いで会社に戻って来た。 副社長に『出来る限り本日中にお召し上がり下さい』とお相手にお伝えください、と言い忘れない内にお願いした。 ハァーッ、良かった。これでやれやれ一安心だ取り敢えず間に合った事にほっとする。午後の副社長のお出掛けには十分間に合う時間だ。 この後、何かあっても私の責任外だ。 最後の最後に副社長が忘れずに持参するか、出掛ける直前に確認すれば良い。
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