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俺はパーテーションの内側に入りながら言うと、そこにはリクルートスーツを着て座っている女性が顔をあげて俺を見た。
「…は?」
彼女を見つめて、俺は驚いてその場で硬直してしまうと、彼女はお茶を飲んでいたけど、ゆっくり立ち上がり俺の前に体を向けた。
「吾妻杏香。ARインターナショナルに就職したくて、ここ二年猛烈に頑張ってきました。私を入社させてください。後悔なんてさせません!!」
グッと右手の拳を握りしめて、瞳を輝かせながら杏香が言うと、やっと俺はそこで我に返った。
「き、…杏香?!でも、あんなに頑張っていろんなスキルを身につけて……」
と俺が言いかけると、杏香は大きく頷いた。
「全部、凌馬のそばにいるため、デス!!」
「それ言っちゃった…。面接なのに」
「じゃ、ちゃんと面接してくださぁい!」
杏香は頬を膨らませて言うと、俺は思わずフッと笑ってしまった。
「話すことは、ないだろ。もう十分知ってる。そのスキルも頭の回転の速さも、器用なとこも。それから…」
杏香は椅子に腰を下ろしながら俺を見上げて、
「それから?」
と言って首を傾げると、俺はテーブルに茶封筒を置いて杏香の肩に手をかけた。
「いつも、俺より一歩先にいる杏香が好きだよ」
俺はそう言って杏香の唇に軽くキスをした。
「知ってる。最近ちょっとメンタル弱ってたこともね。私が頑張ってた理由なんか、一つだけなのに。言わなくても分かるでしょ?」
「…あはははっ」
そうか。そうだよなっ!!
そう思うと、なんだか俺も笑ってしまった。
「一緒に働くために頑張ってきたの。だから、これからは、オフィスラブだよ!」
杏香はそう言って両手で俺の肩に手をかけてくると、杏香の方からもキスしてきた。
「言うと思った…」
「でしょ?」
俺と杏香は同時に笑い合うと、もう一度唇を重ねて寄り添った。
そうだよね。
杏香がそばにいてくれるなら、
これからも、きっと楽しい毎日が待ってること、間違いなし!!
俺はまだまだ、この先もきっと、杏香に振り回されるんだろう。
完
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