10人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は私を見る。よく見つめる。
そんな時、私は少し照れてしまうというのは内緒。
ひとの顔を見る癖は、私に対してだけのものじゃないかもしれない。
そう思うと、のぼせ上ってはいけないと思うんだ。
「……千里は彼女作んないの」
「かの」
ごほっ、と彼はむせる。
喉に生ハムが詰まったのか、胸をとんとんと叩いて、お茶を飲み干す。
そして濡れた唇を手の甲で拭いながら、また私を見る。
すぐさま、視線を落とした。
酔いに任せて、余計なことを言ってしまった。
妙な沈黙が流れる。
私と一緒にいるってことは、そういうこと?
でも彼は一切私に手出しをしない。
チッチッチッと、壁掛け時計の秒針の音がやけにうるさく響く。
この針の行く先は、何処?
私たちの行く末は、何処なんだろう?
最初のコメントを投稿しよう!