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「いいや、血液が一致したのは本当だ。本来なら君はドナーとして完璧で、リョウタ君を救う事が出来た。そうじゃなければ……、リョウタ君が死んだことを、血が合わなかったから仕方がないと、君が思うかもしれないからね」
「どっ、どういう……こと……だ……」
俺の言葉に、先生の穏やかな微笑みが初めて消えた。
その双眸に浮かんでいたのは、ぽっかりとあいた底知れぬ感情という穴。
あらゆる感情が、その穴に吸い込まれて消えていく、そんな恐怖が俺の心を襲った。
「絶望を作るのは簡単だな。少しの希望をちらつかせ、それを叩き潰せば簡単に堕ちる」
先生の口から飛び出したのは、俺が無差別殺人を起こした時、殺した子どもの母親に向かって吐いた言葉。
この言葉は、どこにも記録されていないはず。それを何故先生が……。
「お前の死刑は、今から執行される」
無表情なままの先生から、死刑宣告がなされた。
どうやら、俺はこれから安楽死させられるらしい。
先生が、近くにあった機械に手をかける。その機械のコードは、俺の頭や手足など、あらゆる部分に延び、取り付けられていた。
準備が出来たのか、先生の手が止まった。
そして出会った時と同じ、穏やかな微笑みに戻ると俺に言った。
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